水曜の朝、午前三時

昨日買ってきた本です。この本はずっと気になっていたものなんですよね。この本のタイトル「水曜の朝、午前三時」は私の大好きなS&Gの曲のタイトル。何か音楽の事でも書いてあるんだろうか・・と思ってたんですけど。
内容は全然関係なかった。でも作者の方は絶対S&Gから取ったと思う。主人公の女性がよく洋楽を聴いていてこの頃の時代のミュージシャンの名前が沢山でてきたから。
内容はガンでなくなる直前の主人公が自分の過去を娘に伝える話。まさにこの時代ならではの恋愛物語・・なんだけどそれ以上にの主人公の心の葛藤を描いたヒューマンドラマだと思う。・・私ねこういう話読んでしまうと凄く感化されてしまうんだよね(笑)
物語の大筋は1970年の大阪万博の事なんですがその話をする前に少し、書き物だった主人公の事も書かれています。私はそれがとても胸にきました。ー主人公がある書き物の原稿依頼を受けてその打ち合わせをかねた会食会に呼ばれた時の事・・担当の編集者がやけに緊張しているからおかしいと思ったらその緊張は後からきた編集長を恐れての緊張だったのです。50代半ばのその編集長は自分の手柄話ばかりを喋っているんだけれど多分、この話を何遍も聞いている編集者が初めて話を聞くように間の手をいれたりうなずいていたりする。すっかりあきれ果てた主人公は「これは一体何の場なのだろう」と思いながらさんざんそんな話を聞かされた挙げ句、言われた言葉は「基本的に好きなものを自由に書いてください」でした。なので主人公は「喋る人、頷く人」というエッセイを書いたんです。それを貰って当の編集者は当惑して電話をかけてきました。色々遠回しな物言いをしこっちが「ではボツにして下さい」という言葉を待って挨拶もそこそこに電話を切りました。この当時の主人公は上が黒だと言えば白でも黒だと頷き、ずっとそうした雑誌を作ってきた編集者にハラを立てていましたが、最期の時にはそれが間違いだったと言っています。
「彼らは小さい世界に生きている小さな人たちなのです。だからこそ編集長は自分を大きく見せようと休みなく語り続けていたのです。ここで忘れてはならないのは例え小さかろうとも、彼らにとってはそこが世界のすべてだということです。何があってもここで生きていこう。そう決めた人たちを笑い物にしようとした私はやはり量見が狭かったのです」
確かに世界は広い。全部を知ろうとしたら人生何回生きなければならないでしょうか。今、自分がこうして生きている道はいくつも選択肢があるけど選べるのはたった1つです。その1つは自分が選んだ世界で一生、その道を歩いていく。その中で「黒」を「白」と云えと言われたら「白」と答えるのが生きていく事なのですよね。私の周りにもそういう世界で生きている人たちがいます。なんて量見が狭いんだろうと思っていたけれど判っていてもそうしないと生きていけないんです。嫌だったらやめればいい、それが簡単にいくものではない事も判っているんでしょう。バカにしながら自分もそこまではないかもしれないけれど生きようと思っている道にそれはつきものなんだと思います。そう考えて人1人はなんてちっぽけなものなんだろうと思いました。でもその中にはかりしれない沢山のものが詰まっています。だから人は生きられるのかも。
柄にもない話をしてしまいましたが。やっぱり「本」って面白いですね。人がどんな事を考えているのかどう思っているのかとかを知る事が出来る。自分では絶対思いつかない事を。
これからも沢山本を読みたい。